ピントを外した写真が、お気に入りの一枚になることがある。

奥の桜並木を狙ったのに、シャッターを切る瞬間、カメラが勝手に手前の枝を選んだ。すぐに撮影した写真を確認する。「なんだよ」が「……意外といいね」と調子よく一瞬で気分が変わった。偶然の産物の方が、狙った一枚より好きになってしまうことは、カメラをやっていれば誰しも経験するだろう。
でも、「なんだよ」は「なんだよ」だ。偶然に頼っていては、狙った写真は永遠に撮れない。
シャッターを切るたびに、カメラが勝手にピントを再調整する。この「余計なお世話」を消すのが、親指AF(バックボタンAF)だ。設定そのものは5分もかからない。ただし、キットレンズ(XC15-45mm)を使っている場合、ネットの解説通りに進めるだけでは踏む落とし穴がある。
1. なぜ「親指AF」にするのか
親指AFとは、シャッターボタン半押し時のAF機能を無効にして、背面のAF-ONボタンにピント合わせを独立させる設定だ。
デフォルトのまま使っていると、こんなことが起きる。

奥の風景にピントを合わせ、構図を整え、息を整えて、「ここだ」という瞬間にシャッターを切る。ーーウィーン。カメラが手前の花に気を利かせて、ピントを再調整する。狙っていた奥の風景は、ボケた。
親指AFにすると、AF-ONボタンで一度合わせたピントは、指を離した瞬間に固定される。シャッターボタンを何度押そうが、カメラが勝手に上書きすることはない。「ピントを合わせる」と「シャッターを切る」を分離する——それだけで、意図した写真が撮れる確率は上がる。
2. 設定手順
X-S10は最初からAF-ONボタンが背面に配置されている。私たちがやることは一つ、シャッターボタンのAF機能を切るだけだ。
シャッターボタンのAFをOFFにする
MENU/OKを押す- 「設定(スパナのマーク)」 タブを選ぶ
ボタン/ダイヤル設定>半押しAFを選ぶAF-SとAF-Cを、両方ともOFFにする
※ AF-Sは「静止物向けAF」、AF-Cは「動く被写体向けAF」
⚠️ 両方OFFにしないと意味がない。 片方でも残っていると、シャッターを切る瞬間にピントが上書きされる。必ず両方確認してほしい。
これで設定は完了だ。以降は、AF-ONボタンで親指でピントを合わせ、人差し指でシャッターを切る。
3. キットレンズ(XC15-45mm)の落とし穴
「よし、これで行こう」と構えた瞬間、別の問題が待っている。
AFモードのまま、レンズ前側の細いリングを回してみる——ピントの微調整をしようとして。
ーーウィィィン(画角がワイドやテレに動く)

フォーカスリングのはずが、ズームになる。設定を見直す。また回す。またズームになる。これはミスではなく、XC15-45mmの仕様だ。
このレンズは電動ズーム(PZ)を採用しており、AFモード中はリングの操作が強制的にズーム動作になる。ピントの微調整という技が、このレンズとAFモードの組み合わせでは使えない。
キットレンズへの最適解:MFモード+AF-ON
解決策は、カメラのフォーカスモードをマニュアルフォーカス(MF)に切り替えることだ。
「自分でピントを合わせるのは難しそう」と思うかもしれない。ここがポイントで、富士フイルムのカメラはMFモード中でもAF-ONボタンを押した瞬間だけ自動でピントを合わせてくれる(ワンプッシュAF)。
運用はこうなる:
- フォーカスモードを MF にする(前リングがフォーカスリングとして固定される)
- AF-ONを押す(一瞬で自動ピント合わせ)
- 「もう少し追い込みたい」なら、前リングを回す
- リングを動かした瞬間、画面が自動で拡大される(MFアシスト)
この拡大表示はミラーレス各社が採用している仕組みで、X-S10ではフォーカスリングの動きを電子接点で検知して瞬時に反応する。ピントが合っているかを目視で確認しやすくなる。
フォーカスピーキングも一緒に設定する
AF/MF設定 > MFアシスト > フォーカスピーキング をONにしておく。色はレッド(HIGH)がおすすめだ。ピントが合った輪郭が赤く光り、どこに芯があるかが一目でわかる。
AF-ONでバシッと合わせ、リングをコクッと回して赤い輪郭を確認し、シャッターを切る。この流れが体に馴染んだとき、「なんだよ」の回数は確実に減る。
💡 Fnボタンに「フォーカスモード」を割り当てる
X-S10にはAF/MFを切り替える物理スイッチがない。そのままではメニューを毎回潜る必要があるので、上面のFnボタン、またはQメニューに「フォーカスモード」を割り当てておくと快適になる。
まとめ
設定のポイントは二つだ。
半押しAFのAF-SとAF-Cを両方OFFにすること- キットレンズを使うなら、フォーカスモードをMFに切り替えて運用すること
最初の一週間は、親指と人差し指がバラバラに動く感覚が落ち着かないかもしれない。でも一週間後には、指がこの動きを覚えている。そして「なんだよ」が「なんだよ」のまま残るのではなく、狙い通りの一枚と、たまに訪れる「ラッキー」に変わっていく。
将来、XFレンズなど光学式フォーカスリングを持つレンズに乗り換えたとき、この設定はさらに使いやすくなる。でも今、キットレンズを利用しているなら、この運用を体に叩き込んでおく時期だ。
▼ X-S10のボタンカスタマイズについては、前の記事で解説している。 www.frame-story009.com